スクストSS 「ほたるの決意」
pixivにupしているSSです。2年前に書いたものですが。ほたるの危うさが好きです。(悪堕ちが好きなもんで)
☆☆★
こうなってしまったのは何がきっかけだったんだろう。
いつまでさかのぼれば違う《現在》を選ぶことができたんだろう。
もしかしたら違う世界のあたしはその可能性を掴んでいるかもしれない。
でも……。
あたしは、目の前に立ちはだがるチカちゃんに向かって叫ぶ。
「あたしは、この時をずっと待っていたの!一ヶ月も前から毎日毎日、夜も眠れなかった!なのに…どうして邪魔をするの!」
「それはチカも同じだよ!いくらほたるちゃんと言っても…。うん、絶対ほたるちゃんを倒してみせる!」
チカちゃんの顔には、いつもの笑顔は見受けられない。真剣そのものだ。
あたしたち二人は、戦う運命を強いられてしまったのだ。戦いたくない。けれど、戦わなくてはならない。そうしなければ、あたしは"あたし"を悲しませることになる。もちろん、それはチカちゃんも全く同じ立場なのだろうけれど…。
あたしはいつも、誰かのために頑張ってばかりだった。
例えば生徒会。ちょっと強引な部分はあったけど、最後は自分の意思で、学園の風紀のために、あおいさんや栞さんの期待に応えるために、入ると決めた。自分の頑張りで誰かが笑顔になることが嬉しかった。
フィフス・フォースとしてもこれまで、この世界そしてみんなの笑顔を守るため、妖魔を倒すんだ、平行世界の消滅を防ぐんだ、と頑張ってきた。
でも、その結果、"あたし"はどうなるの?"あたし"は、頑張った結果、どこかで倒れてそのまま死んじゃうの?それでいいの?
最近、ふとそんな思いが頭をよぎった。
もし、誰かと命を奪い合わざるを得ない状況が起きたとしたら、あたしは、相手のために、この"あたし"の命を相手に差し出せるだろうか…。
「ほたるちゃん、お願い!ここはチカに譲ってほしいの!」
「ごめんね。今ここで素直にチカちゃんに譲ったら、自分の気持ちに嘘をつくことになるかもしれないの…。だから、無理なんだ。」
「ほたるちゃんは、いつもみんなに優しくて、すごいよね。チカも、何回もほたるちゃんに助けられたし、すっごく感謝してるの。でも…あと今回だけだから!チカの笑顔のために、我慢してくれないかな!?次は、きっとチカが譲るから…。」
チカちゃんの笑顔のために…か。
誰かを笑顔にするため頑張るのって、良いことだ。だけど同時に、大変なことだとも思う。だから、たまには頑張ることをやめてもいいんじゃないかな。あたしは"あたし"を応援したい。"あたし"は、頑張りを受け取るほうになってもいいと思うんだ!
そうだよ。"誰か"の中には"あたし"も入っているはずだよね。うん、これは、"あたし"の笑顔のための戦いなんだ!
あたしとチカちゃんはお互いの表情を伺いながら、じわりじわりと近づいていく。どうする…?どうやって彼女を突破する…?
「あ!花火だ!」
あたしが窓の方を指差すと、チカちゃんは思わずそっちを向いた。その隙にあたしは自分の部屋まで猛ダッシュして、逃走に成功した。
「花火なんてないよー!あ、ほたるちゃーん!もー!」
チカちゃんの可愛い怒った声がチームハウスに響き渡る。
…こうしてあたしは、最新号の「はにかみ」を真っ先に読むことに成功したのです!